004 脱皮とクチクラ層
左図はスジエビの表皮断面の模式図です。ご存知の通りザリガニもエビ、カニ、シャコなどと同じく十脚目に属します。
庄司安太氏の研究ブログ「スジエビの不思議」の記述を参考にニホンザリガニの脱皮の経過などについて確認してみましょう。
ヤバイ!! ひっくり返ってる。10年飼っていても時に驚かされることがあります。ザリ飼育にとって必然のこの脱皮劇は、図の表皮細胞とクチクラ層の間で起こります。クチクラの外骨格は硬くて丈夫ですが伸縮性が無いので、生長に合わせて何回も脱皮します。成体に成るまでに約20回、その後も年に1~2回ほどの脱皮をくりかえし生長し続けます。
まず古いクチクラ層の内側、表皮細胞層との間に新しい外殻が形成されます。新しい外骨格はクチクラ3層のうち表クチクラ層、外クチクラ層の2層からなり、この段階で古い外骨格を脱ぎ捨てます。その後に新しい外骨格の内側に3層目の内クチクラ層が形成されてカルシウム分などが沈着し数日かけて脱皮前後の変化が完了します。
このように説明されると実際に目の前でおきる脱皮の経過と良く符合します。
①まず脱皮が近づき目の後ろに胃石の白い影がうっすら見え始めるころ、内クチクラ層からカルシウムなどが胃石に吸収され、同時に体色にも脱皮前の変化が見られるようになるのでしょう。
②脱皮直後の外骨格は軟弱なのと同時にかなり透明です。この時期は表皮細胞などに含まれる色や内蔵など普段見えない色柄が良く透けて見えます。
③脱皮後すぐに第3の内クチクラ層が形成されはじめ、胃石からのカルシウムなどが沈着し硬化が進むと同時に色素沈着も進んで普段の体色に戻り、内部の色柄も見えなくなるのでしょう。
このようにして、硬い外骨格の内側に一回り大きな新しい外骨格を作って更新するという「難問」が解決されます。
この記事の直前のトピックス「003 色変のしくみ」の中で述べた「外層」がこのクチクラ層に相当し、「内層」が表皮細胞とその内側に分布する色素胞ということになります。北の瑠璃の青色は内クチクラ層に分布する色素胞の変異なので脱皮殻が薄青色を呈し、脱皮後の発色も数日かけて元の青色に戻るということになります。
野生個体の中には 銀(白)色、金(黄)色、半透明 といった個体もごく少数見られるようですが、未だ繁殖実験が行われていないようで、遺伝するのかしないのか、どんなタイプの遺伝なのか、はっきりしていないようです。
一方、飼育の餌にカロテンを含まないものを与え続けると色素形成が阻害され、次第に色が抜けて白くなります。この性質を悪用して「希少レアカラー」として神奈川県から売り出してる人がいます。偏った餌を与えて白化した個体は普通の餌を与えると次第に着色して、1回脱皮をすると完全に元のノーマル色に戻ります。エサによる白化であることをきちっと発表して売り出すべきです。