003 色変のしくみ 内層、外層
北の瑠璃個体群の青変は外殻の色素層に起きた変異で、外殻に含まれる色々な色素のうちオレンジ色の色素が青色に変化しています。
稚ザリのうちは外殻も薄く透明ですのでノーマルとの違いはわずかですが、多数の稚ザリを見比べるとノーマル群はオレンジ色に北の瑠璃はワイン色に見えます。4令くらいになると触角の色の違いで見分けられるようになり、2cmくらいに育つころには誰が見ても「青い」と言える色になります。そして、ハサミなど殻の厚い部分が先行して鮮明な青色になっていきます。5歳10歳と年を重ねるほど青色は鮮やかに深みを増し、褪せたり濁ったりすることはありません。
縁あって「白変」個体を飼育する機会を得ました。砂礫や落葉の生息環境はノーマル(茶)の保護色になっていて、この中で青色個体を見るとショックを受けますが、白変個体はさらに大きなショックです。飼育中も常に物陰に身を隠し警戒心の強さも相当なものです。
個体は写真のように少々の青とグレーが入っていますが、脱皮直後は白さも増し内蔵の色がうっすらオレンジ色に透けて見えます。ノーマル(茶)の何処がどう変わればこのような白になるのか、色変の仕組みを一緒に考えてみましょう。
まず北の瑠璃と同じように外殻の色素層に色変が起きたと仮定してみます。脱皮直後には新生の外殻は透明度が高いので内蔵をはじめ内側全体が透けて見えるはずです。実際には画像のように全体が白く胃など内蔵のオレンジ色が薄く透けていました。という事は、外殻だけではなく内側全体も白いということです。茹でたカニやエビを食べる時、身の表面の赤い色が目に入りますが、これが殻の内側の筋肉表面の色素層で、これら内側の色素層全体も白化しているということです。
ザリガニの体色を考えるときには、外殻の色素層(外層)と筋肉や内蔵表面の色素層(内層)とを区別して考える必要が有りそうでです。「白変」個体は(内層)(外層)両方とも白化しているということ、「北の瑠璃」の場合は(内層)ノーマルで(外層)のオレンジ色のみが青変しているということです。
このように(内層)(外層)を区別して考えると面白い事例の説明が可能になります。「青色個体が成長するにつれて色あせて茶系になってしまう」という事例です。これは、(内層)が青変、(外層)が薄いノーマルというケースです。小さいうちは外殻は薄いので(内層)の青色が目立ち「青ザリ」ですが、生長して外殻が厚くなるにつれ「ノーマル(茶)の色が勝ってくる」と説明できます。
確認のためには脱皮殻に注目して下さい。このケースの脱皮殻はノーマルと同様の薄茶色ではないでしょうか。ちなみに北の瑠璃の脱皮殻は薄いブルーです。また触角の色も同様に目印になります。
飼っていた青色個体が脱皮のたびに色あせて茶っぽい色になってしまったという経験をお持ちの方、コメントお願いします。