10. 青色の遺伝

 アメリカザリガニについては「カロテンを含まない餌を与え続けると青化する」現象が知られています。ごく稀に見つかるニホンザリガニの青色個体については、自然の生息地から見つかるので餌の偏りが原因とは考えにくいのですが飼育・繁殖が困難なことから詳しく調べられてはいませんでした。


 今回の繁殖と稚ザリの育成から分かった事をまとめてみますと

ⅰ)青色個体が見つかることは非常に稀。

ⅱ)青×青の交配から生まれた子は全個体が青色になった。

ⅲ)青×茶の交配3腹のうちの1腹は、子の約半数が青くなる特徴を持っていた。他の2腹

  の子には青くなる特徴を持ったものはいなかった。


 これらの事を既知の遺伝の例にあてはめてみると、青色の原因が「劣性の因子で、ホモで形質が発現する」遺伝の例と良く一致します。

 


 一般的な茶色の表皮を決める因子を優性「 B 」、青い表皮を決める因子を劣性「 b 」、と仮定します。「 b 」は劣性ですので両親から受け継いで「 b  b 」となったときのみ青色を発現します。各個体の遺伝子型は、茶色は「 B B 」又は「 B  b 」、青色は「 b  b 」と表すことができます。そして、これらの組み合わせからは、


   ①「青×青」からは全て青色の子が生まれる。    

      b b × b b  ⇒  b b

   ②「青×茶」は親の茶がホモであれば子は全て茶色。 

      b b × B  B ⇒  B b

   ③「青×茶」は親の茶がヘテロであれば子の半数が茶色、半数が青色。

      b b × B b  ⇒  B b + b b

 

 茶色個体は、外見からは遺伝子型が「B B]なのか「B b」なのかの確認は出来ないのですが、上の②③からわかるように「青×茶」から生まれる茶色個体は全てヘテロ「B b」です。この出生の確認できる茶色個体の成長を待って以下の実験を行います。

 

   ④上の②③から得られる茶色の子と青を交配すると③と同じ結果がでる。

      b b × B b  ⇒  B b + b b

   ⑤上の②③から得られた子同士の「茶×茶」からは青色が4分の1生まれる。

      B b × B b  ⇒  B B +2 B  b + b b


 今回の一連の繁殖は上記①②③に該当すると見られるので、子ザリが成長した段階で④⑤

の実験ができると万全です。ニホンザリガニの飼育の現実から今後数年はかかる困難な実験ですが、後日この項目に加筆・報告できるといいですネ。