002 青色の秘密
「なぜ青い?」青い理由を考えるなら、その前に大部分のニホンザリガニがなぜ茶色いのかをまず考えてみましょう。最先端の知識・技術で対応するなら色素に関係する遺伝子を特定して合成される色素の種類と量から体色を説明することになるのでしょうが、それはどこかの大学の研究室に期待するとして、ここでは「紙と鉛筆」でできる範囲で考えてみましょう。
一語で「茶」と表現されるワイルドの体色も、よ
く見るとかなり「黒い」ものから「赤レンガ」のよ
うな色まで、また緑を含んだ「オリーブ色」のよう
なものから腹側がかなり青っぽいものなど結構変化
に富んでいます。そして飼育してみると、生長段階
によって、また脱皮の前後で色合いの変化すること
も多く見られます。
これら変化に富んだ「茶色」はオレンジ色を中心
に黒や青など何種類もの色素が重なり作り出されて
いるのでしょう。
「北の瑠璃」個体群に見られる「青色」は上述の色
の変化とは明らかに異質ですので、何か別に原因が
有ることはすぐに想像できます。「遺伝」なのか餌
や水質などの「環境」によるものなのか実証されて
いませんでしたが 2012年からの繁殖実験により、
これが「遺伝」によることが明かになり、2018年
9月から公的機関による「追試」も進めています。
その遺伝の仕組みは単純で、教科書のメンデルの
法則と同じ遺伝をします。「茶」に対して「青」が
劣性で、ホモの時のみ「青色」を発現します。
このことから、ワイルドの「茶色」を構成する
「オレンジ色」に対応する遺伝子が変異して「青
色」色素を生ずるようになったと考えます。そして脱皮殻が「うす青い」という特徴から、この色素が体表に分布することが分かります。
また脱皮殻を茹でてみると青色個体の「うす青い」殻はワイルドのように真っ赤にはならずに「ベージュ」色です。これらの特長が将来これら「オレンジ」や「青」の色素を化学的に特定するときの参考になることでしょう。
ネット上の画像に見られる青色個体には北の瑠璃とは明かに特長の異なるものも見られます。「特長が異なる」にはそれなりの理由が有るわけですから、どんな仕組みで「青い」のか、他の個体群についても究明されると良いですネ。