07. 卵の発生

 飼育ケース前面のガラスに沿って巣穴が掘られるように仕組んでおけば抱卵♀の観察は可能ですが、卵の発生進行そのものを詳しく観察することは困難です。偶然に、抱卵1ヶ月で死んだ♀を手にする機会があったので、卵だけを腹肢から取り外して人工孵化を試みました。

 

 ヴァージンウォーター、ニホンザリガニが生息する水、岩の間から湧き出る雑菌や排泄物を含まないきれいな水、もちろん塩素なんか含んでいないし水温も一定、流水の中で母ザリが腹肢を動かしてくれるので酸素も十分。そんなヴァージンウォーターの「環境」を、この取り外した卵に用意してやることができるのだろうか・・・。

 現実には自宅飼育槽の片隅で、ネット容器にバラした卵を入れ、下から強めのエアーを当ててみました。飼育水は水道水をもとにしているので雑菌は少なくカルキ抜きも十分。換水にも気を配っているので排泄物の含有も少なく、水温の日変動は0~1℃程度と安定、酸素も十分です。4月13日~6月15日までの温域は6℃~15℃でした。

 

 

 

 産卵から1ヶ月後までの部分は別個体の画像を組み合わせて、産卵から孵化までの「卵の変化」を追ってみましょう。

 

 


 産卵翌日

 

 まだ糊状のものに覆われ、母ザリは縦・横・斜めと頻繁に身体の向きを変えます。卵を満遍なく定着させようとしているように見えます。


 産卵4日目

 

 ようやく「のり」もとれ、卵がくっきり見えるようになりました。

 母ザリは、まだ色々な向きに姿勢を変えます。


 産卵 14日目

 

 この時期は卵殻に対して中身が縮み、周囲に透明部分ができます。


 産卵 30日目

 

 透明部分は見えなくなります。


 産卵 35日目

 

 死んだ母ザリの腹肢から取り外した卵。

 


 産卵 63日目


 産卵 70日目

 

 卵に「そろった変化」が見られるようになり、「発生」が進んでいることを確信。


 産卵 75日目

 

 黒い部分は卵黄に相当し背中側、白っぽい模様になっているのが腹側の脚などになるようです。


 産卵 80日目

 

 


 産卵 85日目

 

 

 

 産卵 90日目

 

 ようやく「目」が。

         


 産卵 94日目


 産卵 97日目


 産卵 100日目

 

 孵化。


 生息環境によっては、もう少し抱卵期間の長いケースも多いと思われます。


 産卵 100日目

 

 1令稚ザリ、網にしがみついています。まだ自由に動きまわることはできず、母ザリの腹肢と繋がっている時期です。


 産卵 101日目

 

 まだ孵化していない球状の個体も混じっています。

 

 この1令期は5~6日で、脱皮して2令になると姿もザリガニらしくなり、自由に動きまわれるようになります。


( 注・別個体の画像・2令期 )


 2令期は、正確には、まだ尾節が

1枚の「柄の無い団扇(うちわ)」状の形です。3令になって初めて5枚に分かれた「尾扇」となり、親と同じ姿になります。



 

 「当初106卵、2令分離時の稚ザリ42匹」の結果を得ました。母ザリの愛情には及びませんでしたが、なんとか合格でしょうか。人工孵化となった卵発生の全期間にわたって死卵(変色、破裂)がポツポツと発生し取り除きましたが、終盤の「孵化→1令→2令」の時期の死亡が最も多かったようです。